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重ね合わせ

コヒーレンス・相対位相・干渉

重ね合わせをコヒーレントな線形結合として捉え、位相が後の操作に影響する理由を説明します。

公開中26 入門
重ね合わせ相対位相|+> と |->アダマールゲート干渉

学習目標

  • 重ね合わせを、基底状態のコヒーレントな線形結合として定義する。
  • コヒーレントな重ね合わせと古典的な不確実性を区別する。
  • |+⟩、|−⟩、アダマールゲートを用いて位相に敏感な状態発展を追う。
  • 干渉を、確率ではなく確率振幅の足し合わせとして説明する。

道筋についての場面

アリスは観測室に戻り、0 と 1 と書かれた二つの通路を見つけます。案内役は、「アリスが小さな古典的人物として両方の通路を歩く」という説明を退けます。通路の名前は基底ラベルです。量子状態は、それらのラベルに対して確率振幅を持ち、後の操作によって振幅が強め合ったり打ち消し合ったりします。

比喩はここまでです。重ね合わせは「分身」ではなく、ベクトル空間の線形結合です。

線形結合としての重ね合わせ

第1章では、純粋な量子ビット状態を

ψ=α0+β1|\psi\rangle = \alpha|0\rangle + \beta|1\rangle

と書きました。選んだ基底で複数の振幅が非ゼロのとき、その状態をしばしば基底状態の重ね合わせと呼びます。

代表的な等しい重ね合わせは

+=0+12,=012|+\rangle = \frac{|0\rangle + |1\rangle}{\sqrt{2}}, \qquad |-\rangle = \frac{|0\rangle - |1\rangle}{\sqrt{2}}

です。どちらも計算基底で測定すると (P(0)=P(1)=1/2) になります。しかし同じ状態ではありません。マイナス符号は相対位相を表し、後の操作で測定結果の差へ変換できます。

|+⟩ と |−⟩ の計算基底測定
0NaN%
1NaN%

棒グラフが同じでも、状態が物理的に同一とは限りません。この測定基底では相対位相が見えないだけです。

普通の不確実性ではない

古典的混合(classical mixture)では、半分の確率で ( |0\rangle ) を、半分の確率で ( |1\rangle ) を準備したが、どちらか知らない、という状況を表せます。これも計算基底測定では 50/50 です。しかし、二つの成分を結ぶ安定した相対位相はありません。

一方、( |+\rangle ) のようなコヒーレントな重ね合わせには相対位相があります。計算基底測定だけを見ると違いは隠れますが、測定前に別の量子ゲートを入れると差が現れます。

同じ確率に隠れた違い

古典的混合

  • 準備は |0⟩ または |1⟩ のどちらか。
  • 成分間に安定した相対位相はない。
  • 単一量子ビットの干渉は現れない。

コヒーレントな重ね合わせ

  • 一つの純粋状態が両方の基底成分を持つ。
  • 相対位相が状態の一部である。
  • 後のゲートで位相が測定確率へ変わる。

密度行列を使うとこの違いを厳密に表せますが、ここでは操作上の違いだけを見ます。

理解度チェック

|+⟩ と |−⟩ が同じ計算基底測定確率を持ちながら異なる状態である理由はどれですか。

相対位相

相対位相とは、状態の各成分の間にある位相差です。( |+\rangle ) では、( |0\rangle ) 成分と ( |1\rangle ) 成分の位相は同じです。( |-\rangle ) では、( |1\rangle ) 成分が ( \pi ) だけずれており、ここではマイナス符号として表れています。

大域位相は別物です。状態全体に (-1) を掛けた (-|+\rangle) は、通常の測定予測では ( |+\rangle ) と同じです。一部の成分だけが相対的に変わる場合には、物理的に意味のある差になります。

アダマールゲート

アダマールゲート (H) は、計算基底状態と ( |+\rangle, |-\rangle ) を結びつけます。

H0=+,H1=H|0\rangle = |+\rangle, \qquad H|1\rangle = |-\rangle

また逆向きにも働きます。

H+=0,H=1H|+\rangle = |0\rangle, \qquad H|-\rangle = |1\rangle

この式は、位相が飾りではないことを示しています。( |+\rangle ) と ( |-\rangle ) は H の前には同じ計算基底測定確率を持ちますが、H の後では一方が ( |0\rangle )、もう一方が ( |1\rangle ) になります。

H の後に H を作用させる
  1. 1

    |0⟩ から始める。

  2. 2

    H を作用させて |+⟩ を得る。

  3. 3

    もう一度 H を作用させると、振幅が干渉して |0⟩ に戻る。

二回目の H はランダムに結果を選ぶのではなく、振幅を再結合して |1⟩ 成分を打ち消します。

干渉

干渉とは、確率を計算する前に確率振幅が足し合わされることです。( |0\rangle ) から始めて H を二回作用させると、

0H0+12H++2=0|0\rangle \xrightarrow{H} \frac{|0\rangle + |1\rangle}{\sqrt{2}} \xrightarrow{H} \frac{|+\rangle + |-\rangle}{\sqrt{2}} = |0\rangle

となります。( |1\rangle ) に向かう寄与は符号が逆なので打ち消し合います。これは破壊的干渉です。( |0\rangle ) に向かう寄与は強め合います。

理解度チェック

H|−⟩ は何になりますか。

理解度チェック

干渉を最もよく表す説明はどれですか。

まとめ

まとめ

  • 重ね合わせは、基底状態のコヒーレントな線形結合です。
  • ( |+\rangle ) と ( |-\rangle ) は同じ計算基底測定確率を持ちますが、相対位相が異なります。
  • 古典的混合は一つの測定分布をまねできますが、コヒーレントな位相を持ちません。
  • アダマールゲートは等しい重ね合わせを作り、また位相差を測定結果へ変換します。
  • 干渉は、確率を出す前に振幅が強め合ったり打ち消し合ったりする現象です。

参考文献と発展学習

  • Michael A. Nielsen and Isaac L. Chuang, Quantum Computation and Quantum Information.
  • John Preskill, Lecture Notes for Physics 229: Quantum Information and Computation.
  • Qiskit Textbook の単一量子ビットゲートと干渉に関する章。