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測定

測定基底・ボルン則・測定後状態

測定を受動的な観察ではなく、基底に依存する物理的操作として扱います。

公開中25 基礎
測定基底ボルン則射影測定測定後状態

学習目標

  • 測定を、基底に依存する物理的操作として扱う。
  • 計算基底と X 基底の測定にボルン則を適用する。
  • 独立な準備を繰り返すことと、一つの系を繰り返し測ることを区別する。
  • 理想的な射影測定における測定後状態を説明する。

問いを選ぶ場面

アリスは再び観測室の計器の前に立ちます。案内役は、読み取る前にダイヤルの輪を回しました。同じ準備をしたはずなのに、輪の向きによって統計が変わります。案内役は言います。測定はただ見ることではありません。基底によって定まる物理的な問いを投げかけることです。

この章では、その意味を単一量子ビットで具体化します。

物理的操作としての測定

射影測定では、測定基底(measurement basis)を選びます。測定基底は、互いに排他的な選択肢を表す正規直交基底です。装置は、そのうち一つに対応する古典結果を返します。同時に、その系に割り当てる状態も変わります。

計算基底測定では、可能な結果は ( |0\rangle ) と ( |1\rangle ) に対応する 0 と 1 です。X 基底測定では、選択肢は ( |+\rangle ) と ( |-\rangle ) です。これは同じ状態に対して、別の問いを投げかけていることになります。

二つの測定基底

計算基底

  • 選択肢は |0⟩ と |1⟩。
  • Z 基底測定とも呼ばれる。
  • 標準的な回路出力のビットを読む。

X 基底

  • 選択肢は |+⟩ と |−⟩。
  • 概念的には H の後に計算基底測定を行えばよい。
  • Z 基底では見えない位相情報を反映できる。

確率を定めるには、状態だけでなく、どの基底で測るかも必要です。

計算基底測定とボルン則

状態

ψ=α0+β1|\psi\rangle = \alpha|0\rangle + \beta|1\rangle

を計算基底で測ると、

P(0)=α2,P(1)=β2P(0)=|\alpha|^2, \qquad P(1)=|\beta|^2

です。この章では次の状態を例にします。

ψ=0.70+0.31.|\psi\rangle = \sqrt{0.7}|0\rangle + \sqrt{0.3}|1\rangle.

計算基底で測定すると、結果 0 の確率は 70%、結果 1 の確率は 30% です。

ボルン則による確率
0NaN%
1NaN%

この比率は、多数の独立な準備と測定で近づく頻度です。一つの量子ビットから同じ分布を何度も読み出すという意味ではありません。

理解度チェック

|ψ⟩ = √0.7|0⟩ + √0.3|1⟩ を何度も独立に準備して計算基底で測ると、どの傾向に近づきますか。

測定後状態

理想的な射影測定では、計算基底測定で 0 が出たなら測定後状態は ( |0\rangle ) です。1 が出たなら ( |1\rangle ) です。

ここで、二つの操作を区別する必要があります。

  • 独立な準備を繰り返す: 同じ初期状態を毎回新しく作り、各系を一度ずつ測る。
  • 一つの系を繰り返し測る: 最初の測定で状態が変わった後に、同じ系をまた測る。

( \sqrt|0\rangle + \sqrt|1\rangle ) として準備した一つの量子ビットを測定し、結果 0 が出たとします。直後に同じ計算基底で測れば、理想モデルでは 0 が確率 1 で出ます。元の 70/30 分布が復活するわけではありません。

準備の繰り返しと測定の繰り返し
  1. 1

    |ψ⟩ を新しく準備する。

  2. 2

    一度測定して 0 または 1 を得る。

  3. 3

    同じ基底ですぐに測ると、測定後状態に対応する結果が出る。

70/30 の分布は、多数の独立な準備についての主張です。一つの量子ビットを変えずに何度も読むという意味ではありません。

基底依存性と X 基底測定

測定結果は、選んだ測定基底に依存します。X 基底は

+=0+12,=012|+\rangle = \frac{|0\rangle + |1\rangle}{\sqrt{2}}, \qquad |-\rangle = \frac{|0\rangle - |1\rangle}{\sqrt{2}}

です。概念的には、X 基底測定は H を作用させてから計算基底測定を行うことで実装できます。

H+=0,H=1.H|+\rangle = |0\rangle, \qquad H|-\rangle = |1\rangle.

たとえば ( |+\rangle ) は、計算基底測定では 50/50 ですが、X 基底測定では (+) の結果が確率 1 で得られます。どの選択肢を区別するかを、測定基底が決めています。

統計的な解釈

(P(0)=0.7) という確率は、短い列の中で必ず一定の順番や個数が出るという約束ではありません。10 回なら 0 が 6 回かもしれませんし、8 回かもしれません。独立な準備を 10,000 回行えば、観測頻度は 0.7 により近づくと期待されます。理論が予測するのは分布であって、結果の具体的な順序ではありません。

理解度チェック

X 基底測定は、概念的にどのように実装できますか。

理解度チェック

計算基底で測定して結果 1 が得られた直後、理想的な測定後状態はどれですか。

まとめ

まとめ

  • 測定は、受動的な観察ではなく、基底に依存する物理的操作です。
  • ボルン則は、選んだ基底での確率振幅から測定確率を与えます。
  • ( \sqrt|0\rangle + \sqrt|1\rangle ) を何度も独立に準備して計算基底で測ると、おおよそ 70% が 0、30% が 1 になります。
  • 理想的な射影測定の後、測定後状態は得られた結果に対応します。
  • X 基底測定は、H を作用させてから計算基底で測るものとして理解できます。

参考文献と発展学習

  • Michael A. Nielsen and Isaac L. Chuang, Quantum Computation and Quantum Information.
  • John Preskill, Lecture Notes for Physics 229: Quantum Information and Computation.
  • Qiskit Textbook の測定と基底変換に関する章。